2013年9月1日 国際教養大学入学式が挙行されました。
当日は、橋口昌道秋田県副知事をはじめとして多くの来賓にご参列いただき、世界各国からの留学生181名を含む 212名の新入生が、本学の学生としての第一歩を踏み出しました。
入学式式辞
新入生の皆さん、本日は国際教養大学に御入学、おめでとうございます。私は国際教養大学の学長、鈴木典比古でございます。本学の初代学長であった中嶋嶺雄先生は、誠に残念ながら本年2月14日に逝去なさいました。つつしんでお悔やみ申し上げます。本学が創立10年足らずで、日本及び世界において非常に高い評価を受け、このような地位を築くことができましたのは、ひとえに中嶋先生の創立者としての熱意と壮大な構想によるものでありました。
皆さん、皆さんはAIUの宝石であります。否、より正確に言えば、AIUの宝石になるべき原石であります。私達教職員の仕事は原石を磨いて宝石にすることであります。当然のことですが原石なしにAIUは存在し得ません。その意味で諸君はAIUの主役であります。私達は原石であり主役である皆さんを大切に、しかし厳しく磨いていくつもりでおります。今日の入学式の段階では、皆さんがどのような原石なのか、また、磨いた結果どのような光を放つ宝石になっていくのか、未だわかっていません。しかし、一つだけ確実に分かっていることは、諸君を磨いた結果、一つ一つが違った光を放つ「個」を持った宝石になっている筈であるということであります。
皆さんは、AIUでの生活を始めるにあたり、全員が学生寮に住むことになります。皆さんの多くは生まれて初めて、国を離れ、故郷を離れ、親元を離れて生活することになります。ですから、今日の入学式も嬉しさだけでなく、不安もあると思います。これは当然のことです。人間が何か新しいことを始める時にはいつでも、緊張し、不安になります。しかし、この緊張感と不安感こそ、諸君が何か目標を掲げ、それを達成しようとする時に不可欠の感情であります。したがって緊張と不安は、決して悪いもの、恐れるべきものではありません。むしろ、新しいことを始める時に諸君に寄り添う友達のようなものと考えてください。この友達なしには、物事を達成することはできません。緊張や不安を友達にして成長するのです。学長を初め教職員全員が諸君の成長を全力で支援します。本学は英語名がAkita International University, 日本語名が「国際教養大学」であります。英語名と日本語名との間に多少ニュアンスの違いがありますが、しかしながら、この英語名と日本語名を二つ重ね合わせると、秋田にあるInternational Liberal Arts教育を行っている大学ということになります。それではInternational Liberal Arstとはどのような特徴を持っているのでしょうか。この問いに答えるには、internationalとliberal artsを分けて考える必要があります。ま
ず、liberal arts教育ですが、liberal artsの語源はラテン語のartes liberalsにあります。Artesとは英語のartの語源です。すなわち技術、美術、芸術、学芸等、体や手を動かして活動することです。次にliberalesとは英語のliberalあるいはliberateの語源でして、自由な、とか、人間を自由にする、という意味です。したがってliberal artsという言葉の語源であるartes liberalesというラテン語は「人間を自由にするための技芸」という意味を持っています。それでは人間は何から自分を自由にしたいというのでしょうか。それは、その人間が持っている価値観や社会通念や偏見や人間関係から自分を一旦解き放して自由にするということであります。そして同時に、このようにして自由になった自分を新たに創り直すという意味が強く含まれているということであります。すなわち、「自分がこれまでの自分から自分を解き放ち、新しい自分を創る」ということがliberal artsの基本原理です。別の表現をするならば「自分の、自分による、自分の為の」教育と勉学こそliberal artsです。私はここでもう一つのことを付け加えなければなりません。それは以下のことです。すなわち、諸君が「自分の、自分による、自分の為の」liberal arts教育と勉学をしている時に、諸君の友人、知人、隣人も同じくliberal artsをしているということであります。他人が「自分の、自分による、自分の為の」教育や勉学をしていることを諸君は尊重しなければなりません。このように、自分がliberal artsをする一方で、他の人達もliberal artsをする立場を尊重するというならば、それはお互いの「自分」を受け入れるという相互尊重と双方向の対話が保証されていなければならないということであります。すなわち、liberal artsとは、「自分を磨き」、「相手を尊重し」、「対話を繰り広げる」という3つの条件をワン・セットにして存在するのです。
ところで、このliberal artsが行われる場所は教室における授業のみである事はありません。よい気候の時期にキャンパスのあちこちでグループデイスカッションが繰り広げられております。それはあたかも古代アテネの広場で地中海の陽光を燦燦と浴びながらソクラテスやプラトンが弟子たちと対話を交わした情景に通じるものがあります。liberal artsは場所も時間も選ばないのです。その意味でliberal arts教育は24時間教育であります、本学の図書館が24時間開放されている理由はこのような深い歴史的経緯によっているのです。
liberal artsは、対話を重要視しますが、対話とは自分の考えを述べ、相手の考えを聞くということを基本にします。双方向の対話を基本とするとは、何を意味するのでしょうか。それは学生諸君は先ず語るべき自分、そして自分の考え、をしっかりと持っていなければならない、ということであります。授業において隠れる場所がなく、絶えず自分を表現しなければなりません。「自己表現による個の確立」、これこそ原石が光を放ち出す瞬間であり私達が諸君に期待することであります。
そして、本学のもう一つの大きな特徴は、この「自己表現による個の確立」を全て英語で行うことを諸君に課している、ということであります。本学のキャンパスでの全ての授業を英語で行い、さらに1年間の海外留学を義務付け、海外で授業を受けてその成績を持ち帰ってこなければなりません。このように、本学のキャンパスと海外提携校のキャンパスにおいて、
2度にわたってliberal artsの挑戦を乗り切ること、これが国際教養大学におけるliberal artsがinternationalという冠をかぶせられていることの意味であります。このようなinternational liberal artsの自己研鑚を4年間続けていった結果がどのようなものになっているかは明白であります。諸君は燦然と輝く宝石になっています。そして確実に世界に飛び立ってゆくことが出来ます。私は学長としてこのことを誇りを持って保証します。さあ、明日からこの第一歩を歩み出しましょう。
国際教養大学 学長 鈴木 典比古
学部新入生代表スピーチ
皆さんおはようございます。この度ギャップイヤー活動を経て国際教養大学へ入学します、玉城慶人です。
私の中での国際教養大学は独自の経験が評価される大学という印象が強かったです。ユニークなプログラムを含んだ大学生活を通して、個人のアイデンティティを確立していけるだろうという理由から国際教養大学を志願しました。ギャップイヤー制度も志望理由のひとつでした。限られた学生のみが体験でき、また一人ひとりが個々のテーマのもと、違う経験を積むことのできるギャップイヤー制度はそれこそ独自の経験ができる稀有な機会であると考えたからです。
チャンプルー文化と呼ばれる独特の文化を持つ地元の沖縄で、町の人々を結びつけるコミュニティーを作り出したいという思いから私のギャップイヤー活動は始まりました。コミュニティーを作るにあたっての企画は想像以上の困難が待ち受けていました。うまく物事が進まず、この活動に疲れを感じていた私を支えてくれたのは、その時々に出会った人々であり、いつのまにか私のギャップイヤー活動のテーマは「いちゃりばちょーでー」となっていた。「いちゃりばちょーでー」とは、沖縄のことわざで「一度出会えば皆兄弟」という意味です。出会いに感謝することの大切さに気付かされたギャップイヤーとなりました。それと同時に、イベントを通しての出会いは私にとっての宝物です。これからの大学生活で多くの人々に出会い、支えられることでしょう。感謝の気持ちを持ち続けることこそが、最も重要な事なのかもしれません。
国際教養大学では真剣に勉強と向き合い、英語での授業や留学制度などチャレンジを積み重ね、自らの限界に挑戦することになります。それらの機会一つひとつが、さらに人間としての成長に繋がると私は確信しています。このようなバラエティー豊かな環境のなか、私たちがこれから経験する出来事に、価値を見出すことで、さらに充実した大学生活が送れることでしょう。
私には将来の目標や憧れの人間像があります。ギャップイヤーで考えたこと、感じたことを基盤として、大学生活ではここで出会った仲間と共に、教養を高め、それぞれの目標に近づけるよう本気で取り組んでいきたいです。
2013年秋季新入生代表 玉城 慶人
大学院新入生代表スピーチ
皆様おはようございます。私は、グローバル・コミュニケーション実践を専攻し、発信力実践の修士号を取得するため、この素晴らしい国際教養大学大学院に入学しますジャネサ・ランドリーと申します。 本日ここで御挨拶できることを光栄に思います。私は今から二年ほど前、母校のニューメキシコ大学の交換留学制度により国際教養大学に留学した経験があります。帰国して大学後すぐに、「また国際教養大学に戻って勉強がしたい」と思うようになりました。
国際教養大学はグローバル・コミュニケーションを学ぶには打ってつけの場所だと考えています。初めて国際教養大学に留学した時、私はここで様々な文化について学ぶことができました。なぜなら国際教養大学で学ぼうと決意した学生が世界中から集まっていたからです。皆さん、ぜひキャンパスを注意深く見渡し、「グローバルアーチ」の彫刻を探してみてください。それは世界中の文化が集まり、共存している国際教養大学の様子を象徴しています。この大学は正にInternational Universityなのです。ここから新入生の皆さんが見えますが、日本人、アメリカ人、スペイン人、ドイツ人、スウェーデン人、中国人、オーストラリア人などとして見えているのでは。私には新しい学友、素晴らしい友人たちが見えているのです。
前回の留学で、グローバルな仲間たちと出会ったことで、日本文化はもちろん他の文化にも興味を抱くようになり、同時に様々な文化の特性をしっかりと理解し、それを違う文化を持つ相手に的確に伝えることが出来る術を学びたいと思うようになりました。そうすることで、例えば他の文化を持つ人に対して日本の文化とはどのようなものかを示すことができるのです。発信力実践の学位を得ることで自分の目指す姿に近付けると思い、私はここでグローバル・コミュニケーションを専攻することにしました。
修士課程を修了した後は、習得した技術を活かし、映画会社で働きたいと思っています。日本の映画やミュージカルは日本語を学んでいた私に大きな影響与え、ベストを尽くして言語習得に臨むよう動機づけてくれました。その日本の映画界をよりワールドワイドなものにしていくことが私の夢です。また、日本で作られた映画が西洋の観客にもより分かりやすいものとなるような公開の仕方を取り入れて日本映画を広めていきたいです。私が経験したように、背景にある文化についてより深く知りたくなるような作品を広めていくことを目標に、大学院では発信力を身につけたいと思っています。
以前の国際教養大学での生活がどれだけ私を変えたか言葉に表現するのは難しいですが、日本で人生を歩みたいと思わせるほど影響を与えたのです。このように、ここ国際教養大学での生活は皆さんを満足させるものになるはずです。全ての皆さんが、私が経験してきたようなことを経験できることを願っています。今日入学する新入生のみなさん「ようこそ」、そして鈴木学長、教員、スタッフをはじめとする国際教養大学関係者の皆様「よろしくお願いします」。
2013年大学院入学者代表 ジャネサ・ランドリー